キューピーマヨネーズが応募の、今年の短歌から
http://www.yomiuri.co.jp/adv/tanka/index.htm
最優秀賞
「音信の途絶えし友に教わりし カボチャのサラダときどき作る」
埼玉県野田雅子さん
講評;友だちに教えてもらったカボチャのサラダを作るたびに、音信は途絶えてしまったけれども、その友人のことを思い出すんですね。人と人とのつながりに、サラダが素敵な一役を買っている作品で、胸に迫ってきました。「ときどき」というところも、とてもリアルですね。
優秀賞
「パプリカと ベビーリーフを和えてゆく もう新婚じゃない 夏が来る」
ナカゴメ ユミ さん(埼玉県)
【講評】パプリカやベビーリーフという新しい野菜を使っている感じと、「もう新婚じゃない」という部分がリンクし、主婦業に慣れてきた感じがうまく表現できていると思います。
「シューカツを 終えた娘と キッチンで ドレッシングなど 選ぶ日常」
末盛ひでみ さん(兵庫県)
【講評】「シューカツ」という言葉に、時代性を感じます。外で戦ってきた娘が母とキッチンでドレッシングを選ぶことで日常に戻り、ほっとしている気持ちが見えてきました。
「定期券 いらぬ身になり 我が夫は ミモザサラダの 玉子をきざむ」 林 由実 さん(東京都)
【講評】勤めているときには考えられなかった、夫のキッチンに立つ姿を、妻があたたかく見守っている感じが、よく表されている作品でした。でもミモザサラダとは、本格的ですね。
「2円ほど 高いけれども ふるさとの レタスの方を カートに入れる」 ヤスジロー さん(茨城県)
【講評】産地表示する野菜が増えてきた昨今ならではの短歌です。産地を見て、ふるさとを思い出す気持ちがうまく表現されていました。「2円」に現実味を感じる点もよかったです。
「〈生のまま 食べていいか〉とそっと聞く 見合の席に 父こわばりて」 加門 英尚 さん(兵庫県)
【講評】お見合いの席で、カチカチになり、こわばっているお父さんの緊張度合いが、ありありと目に浮かびました。ユーモアも感じることができる微笑ましい作品です。
「まだ慣れぬ 仕事持つ子を 思ひつつ 新の字のつく 野菜きざみぬ」 阿久津 登美江 さん(栃木県)
【講評】まだ仕事を始めたばかりのみずみずしさが残る我が子と、新ジャガなど、新がつく春先の野菜をリンクさせる中で、母と子のつながりが見えた一首です。
「もう一度 「おいしい」の声 ききたくて ポテトサラダを 作る命日」
赤澤 皆子 さん(大阪府)
【講評】結句の「作る命日」の部分で、せつなさが心にささり、その情景が目に浮かぶ短歌でした。亡くなった後もポテトサラダでつながっている、その強い想いが伝わってきました。
「美しき トルコの皿を 眺めいて サラダのレシピ 考えている
」高木春子 さん(神奈川県)
【講評】具体的なサラダの話はでてきませんが、お皿の魅力を伝える「想像のレシピ」がとても効果的です。読者も思わずレシピを考えてしまうようなところもあり、今までにないサラダ感あふれる短歌でした。
「『サラダなら 失敗ないよ』新妻の 娘に持たす 大玉レタス」佐藤 教子 さん(神奈川県)
【講評】サラダならという、具体的なアドバイスが、リアリティある短歌です。娘の新婚家庭に向けた、母の思いやりがうまく表現されていました。
「あれこれと 道の駅にて 欲張った 旬の野菜で 今夜はサラダ」
涙紅 さん(埼玉県)
【講評】「旅先でこういうことはよくある」と、共感できる短歌です。私自身も経験があるので、微笑ましかったです。旅の楽しさを日常に持ち帰る雰囲気がうまく表現されていました。
歌人・俵万智さんの選と講評で構成されています。