北海道の住宅会社「株式会社木の城たいせつ」の創業オーナー、山口昭さん(72)は北海道の森林育成から住宅建設まで一貫経営し、地域資源活用型のビジネスモデルを作った。安い輸入材よりも、地元の間伐材を活用して「地産地消」も徹底した。「たいせつ」には、「耐雪」と家族三代が暮らせる「大切」な住宅との思いを込めている。
周辺からも激しい非難にさらされたが、ここ数年の間に風向きが変わった。2月3日、社会問題の解決に一石を投じたとして第1回企業フィランソロピー大賞(社団法人 日本フィランソロピー協会主催)を受賞した。
フィランソロピーは「人間愛」「慈善」を意味するが、利益の一部を社会に還元する企業だけではなく、本業での社会貢献を評価するために創設された賞だ。自然の中で何ひとつ無駄なものはない、と企業理念に「もったいない」精神を掲げているが、その思想は21世紀の循環型社会を支えるという。
「北海道の自然環境を守り、北海道の人間を守り、北海道という地方を守る、いわば生命地域主義の実践なのです」。山口昭さんは会社の経営哲学を明確に語る。そこから地域で自立し、地域を再生させる会社の姿がくっきりと浮かんでくる。
(毎日新聞2004年2月2日東京朝刊より抜粋)